2013年12月24日火曜日

この1年の「出会いは人生の宝」を振り返る。


ここにきてようやく年の瀬を感じる。しかし年々、「師走」の慌ただしさや、忙しさを感じなくなってきた。ビジネスの世界では、ますますのグローバル化と、物流や情報の収集・伝達などのシステムが進歩、一元化されてきて、従来の「年末年始対策」などの必要性がなくなったので当然かもしれない。グローバル化が進んでいる企業は、国際会計基準の1-12月決算になっているので、経理部門は1月のほうが忙しいくらいだ。

庶民の生活様式も大分変わってきた。元旦から小売業は営業しているので、暮れの食料品の買い溜めも必要なければ、年始の挨拶回りも減ってきたことから、私が子どものころよく目にした母親の「お正月の着物姿」のための段取りや、美容院に行くシーンも遠い昔になった。ホームセンターなどの暮れの「大掃除用品コーナー」も、この時期より、春の進学・就職シーズンの方が忙しいほどだ。そして、お正月恒例の年賀状も変わってきた。賀状の交換だけになっても元気な様子がうかがえる年賀状を毎年楽しみにしているが、それも随分減ってしまった。若い人たちはメールでの新年挨拶が、主流のようだ。

しかし、手段はいくら変わろうが、この時期に1年を振り返ってお世話になった方々や新たに出会った方々に思いをはせ「心の財産の総点検と振り返り」は大切なことである。

「人生の宝」を深く、広く育みたい

私自身、この1年多くの方との再会と出会いに恵まれた。
仙台時代、広島時代に出会った方々との再会は至福の時間である。お互いの近況から始まり、当時の思い出に話がおよぶと、時空を超えてその時の情景やセリフまでよみがえり、音、匂い、味など、よくいう五感で共鳴するようになる。

これは新たな出会いの方にも共通している。
今回テーマにした「出会いは人生の宝」の気持ちが、「一期一会」の心境に近づけてくれ、お会いした方を「五感」で感じ取り、自分の中に浸透させることが出来る。

カネボウコスミリオンに来てからは、出会いの幅が更に広がり、ホームページでリンクさせていただいているお取引先様、異業種、新規事業の方々、海外でも台湾、サンマリノ共和国、中国、ベトナム、スペイン、韓国、ミャンマーなど数多くの方と、言葉の壁を越えて楽しいお付き合いが始まった。プライベートでも、娘のテニス、息子の柔道などの方々を通して、未知の世界をのぞかせていただいている。都度、ワクワク・ドキドキの連続で「明日への好奇心」満足度は自然に高まる。ありがたい限りだ。


当たり前だが、こうした夢のような「出会い」の継続の多くは、「また会おうね」「お会いしましょう」と約束できるからこそ、新たな楽しい思い出を膨らますことが出来る。

しかし、残念にも2度と会うことが叶わぬこともある。市川團十郎さんとの出会いはまさにそれであった。その時のわずかな思い出を噛みしめるだけで、思い出を膨らませることが出来ない。

「出会いは、別れの始まり」といわれるが、お互いに疎遠になったり、意見が合わずに決裂したりする別離なら、そこに自分の意志も入るので納得もいく。が、この世から去ってしまう別れは、あまりに無常で納得できるものでない。

思えば、昨年の11月、市川團十郎さんと京都で初めてお目にかかり、その存在感と人柄に触れて、私は團十郎さんの大ファンになってしまった。
60年来、私どもが「舞台白粉」をお届けさせていただいているご縁で、團十郎さんの「聖マウリツィオ・ラザロ騎士団」ナイト称号受勲式で、祝辞を述べさせていただいたことが始まりだった。
その際、團十郎さんからいただいた返礼は、感謝の念にあふれ、叡智に満ちたもので今でも忘れられない。



既にブログで紹介したが、あの日、私の「舞台白粉」の話を受けて團十郎さんが、「私どもがこうして舞台に立てるのも、カネボウさんのお蔭です」とおっしゃった。
「一時、カネボウさん、元気がない時がございましたが、私どもへの商品づくりを、英断いただき、本当に嬉しかった」と言われた時は、正直、涙が出そうになった。

この7月からカネボウの自主回収問題で、多くの反省を胸に、全社員一丸で信用・信頼回
復に向け活動中だが、改めて團十郎さんの言葉を思い返さずにはいられない。
年明けにお会いする約束もかなわなくなってしまったが、
あの言葉「カネボウさんのお蔭です」は私の心の支えの一つだ。

最早、團十郎さんとの新しい思い出は、望めなくなってしまったが、自分の中で「過去の思い出」を深めることは出来る。
あの日、『頑張ってください』とエールを送っていただいたと思っている。團十郎さんが私に与えてくれた大きな「人生の宝」だと心底思っている。

この出会いのご縁で先日、團十郎夫人と海老蔵夫人にお会いする機会に恵まれた。團十郎さんのお孫さん、勸玄さん誕生のお祝いをお届けすることが出来た。瞳を輝かせ、すこぶる元気なお子様の様子に私の頬もゆるんだ。
その夜、「團十郎さんはさぞやお孫さんを抱きたかったろう……」と思い、胸が熱くなった。團十郎さんの「無念」さは、計り知れない。

振り返るとこの1年、本当に多くの方々と出会い、叱咤激励の言葉も頂戴し、素晴らしい宝を手にした。感謝しきれない思いである。

このことを大切にして、新しく迎える1年も「人生の宝」を深く、広く育みたい。それが「限りある命を精一杯生きる」ことになる。宜しくお願い申し上げます。

皆様、本年も本当にお世話になりました。


田辺 志保