2014年2月4日火曜日

限りある時間を精一杯生きる。

2014年度は、消費税率アップに伴う経済環境の変化が予想され、我々にとっても正念場の年となる。今更多くは語らないが、お客様の笑顔を取り戻すため全社一丸となるのは必定。私自身、限りある会社員の時間を精一杯過ごしていきたい。

人生は長いようで短い。子ども、学生、会社員、そして退職後の人生(老後)。「無我夢中」で過ごしてきたが、これからも悔いなく生きたい。

限りある生命を精一杯生き抜いた山本多恵子さんを想う

昨年暮れ、机を整理していたら、懐かしい一冊の本が出てきた。15年ほど前になるが、私が静岡の責任者の時に出合った本で、今一度読み返して「限りある時間を精一杯生きる」ことの大切さを再度思い知らされた。

時を経たが「今でしょ」と思い、限りある命の中で、周囲に夢と希望を与え、多くのことを教えてくださった一人の女性を紹介したい。

静岡県沼津支店の伊豆・松崎で化粧品と文房具を扱う「有限会社サカンヤ」の奥様、山本多恵子さん。当時はカネボウ化粧品の取引先様で、ご主人と奥様、従業員さんには大変お世話になった。今は文房具と雑貨を取り扱う素敵なお店だ。

実は、多恵子さんは白血病と闘い続け、平成12116日、入院先で息を引き取った。享年44歳。何とも若く、心が痛む。多恵子さんが発病、入院したのは29歳で、長男・幸之助さん3歳、長女・有加理さん2歳だったという。

多恵子さんは、子どもたちが寂しくないようにと、文と絵で自らの思いを「おかあさんのゆめ」という絵本にしたためた。

全くの手作りゆえ店頭の絵本とは違うが、心あたたまる絵本になっている。多恵子さんは入退院を繰り返し、15年に及び病魔と闘った。その間、絵手紙をつくり続け、子どもたちと、友人・知人の多くの方々に絵手紙をたくさん送った。

多恵子さん亡き後、長女の有加理さんがお母さんの描いた絵手紙を、「おかあさんのゆめ」という一冊の本に纏め上げた。限りある生命の尊さと、母親の深い愛情、自然界の万物への愛情に溢れた、胸がキュンと締めつけられるような、涙腺が緩んでしまう遺作集だ。
当時、有加理さんは17歳だが「おかあさんのゆめ」のごあいさつに感動してしまう。


先日、このお話を紹介したいと「サカンヤ」山本さんに連絡すると、気持ちよく快諾くださり、加えてみなさんお元気そうで、嬉しかった。

こうした生き方をされた方を一人でも多くの方に知ってもらいたいと思い、明るく元気で過ごせることに感謝し「一日一日を大切に送る大切さ」を心にとどめていただけたらと思う。

限られた時間を人生の最高の思い出に変える

アメリカに、プリズン(刑務所)から派生した「プリゾニゼーション(Prisonization)」という言葉がある。もともと刑務所文化と社会生活を受け入れる処理を指すが、そのプロセスから、囚人の“刑務所ボケ”という概念も生まれた。俗に大企業病ともいわれている。これは私たちの心の在り方を問う言葉でもあると思う。

囚人は服役中、精神科医の診断を継続的に受ける。そこで一つの法則のような現象が出てくる。「無期懲役囚」は、以前が個性的で特異な犯罪者でも、数か月もすると没個性の無気力な人間へと変化し、反面「死刑囚」は益々個性的で活き活きした反応を示すというのだ。

無期懲役囚はただ、意味もなく変化もない毎日を送ることで、やがてその日の食事と看守の顔色にしか関心を持たなくなる。逆に死刑囚は、刑の執行日を知らず「今日一日が無事に過ぎても、明日は執行されるかも」と毎日思う。必然的に「今日」を大切にし、完全燃焼する覚悟で望むことで、自分の能力を100%以上発揮するようになってくるという。

獄中で、素晴らしい芸術作品や書物を執筆するのは「死刑囚」が圧倒的に多いのだ。

プリゾニゼーションとは、無期懲役囚のようになった人のことを指す。給料明細と上司の顔色にしか関心がないサラリーマン、学生ならば自身の周囲の狭い世界だけに関心を示す、そうした状態を「プリゾニゼーション化されている」と言う。

高度成長で「大企業病」は蔓延し、可もなく不可もなく過ごし、終身雇用の波に乗っていれば何とかなった。今は、終身雇用も変化はしたが、自分で決めない「右へならえ精神」「事なかれ主義」は未だ健在だ。仕組みで動く組織では、個人の意思や裁量が埋没すると勝手に決めつけるからだ。

そうならないために私たちは、仕事や行動に期限をつけ、自分の夢や目標にも期間を設け、それを成就させる日を設けて行動する。

大切なのは、自分自身のプリゾ二ゼーション化と絶えず戦い、後悔せぬように生きることだ。

生きているとは「生まれ出た瞬間」から「死ぬ」までの時間、つまり限りある時間とは限りある命のことである。その時間をどう過ごすか……。


一度しかない「命」の時間。「無我夢中」で全うしたいと思う。

田辺 志保