2014年8月14日木曜日

「持論を常に熱く語る」。これが田辺流!<後編>

人を幸せにできれば自分も幸せになれる。

マルコ様の研修で次にお話ししたのが、人間関係、人づきあいをスムーズにする「4つの幸せ」の実践である。
私が花王カスタマーマーケティング株式会社に出向した際に、全く新しい切り口で提案して一緒に取り組んだ、「やる気、元気活性化運動」をお話しした。

人が「幸せ」を感じる4つとは、人に「愛される」「褒められる」「必要とされる」「役に立つ」、この4つが欠かせない心理という。
その為には、愛と感謝をもって接することである。出会った印象から生ずる概念から、この気持ちをもって人様を眺めると、褒めることが見つかるはずで、それを言葉として発した時に相手は「私は認められた」と感じることになる。
称賛された存在価値は、必要とされている、役に立っている、にも繋がるはずで、誰でも心地よいことこの上なし。元気も倍増する。

私は、このことを仕組みとして組織内で実践しようと考えると、花王の仲間たちがその後押しをしてくれた。



6年前、花王CMK中四国リージョンへの出向が決まった。その時は、カネボウの仲間から離れ、それこそ、たった一人で、アメリカ軍に乗り込む日本の将校のごとく水杯で別れたことを今でも忘れない。
ところが「案ずるより産むがやすし」。花王CMK中四国リージョンには、気持ちの良い素晴らしい仲間が待ち受けていた。ただ私としては、花王という全く異なる組織に入る、扱う商品もがらりと違うだけに、カネボウ時代に培ってきた経験やノウハウは通用しないと思い、過去の功績を全て捨て去り、人間力錬成やマネジメントスキルに役立った資料と書物だけを持参した。全くの新人として、ゼロから学ぶ覚悟で広島に乗り込んだのだ。

といっても、なんせ素人。皆様のご苦労や活躍を只々見守り、都度感心、感激していただけの気がする。持参した資料や書物を開示して、「幹部人間力アップ勉強会」「若手社員のマネジメント講座」「お取引先様の研修会」など、直接のビジネスとは、関係のない感動発信の活動をやらせていただいたくらいである。

その感動発信の一つ、毎月の幹部勉強会の出来事を紹介しよう。
幹部勉強会では、それぞれのGL(部長)に今までに学んだことを持ち回りでご披露していただく、1時間授業を担当していただいた。マーケティングの幹部は積み上げたマーケ知識を披露し、エジプト文明を一時間語った幹部もいた。とにかく、毎月楽しみの時間であった。

勉強会の初回に、私は「4つの幸せ」活動の話をした。するとある幹部からこれを中四国全体で実践できる仕組みを作りたいという提案が出た。
議論を尽くし、中四国リージョンの総意として、素晴らしい活動をしてくれた仲間を、毎月のテレビ会議で紹介して称賛する「褒め称え運動」として、展開することになったのである。正直、花王の商品や仕組みをまだ知らない私には、社内の皆さんに気持ちよく仕事をしていただくことを考えるのが精一杯だったのだが、それが認めてもらえたのである。まさに「幸せ」であった。

達成者表彰から始まり、業績だけを褒めるのではなく、皆さんの参考になるように、何故業績が上がったのか、具体的に掘り下げて、その中身を称賛し、水平展開の輪を作ろう、あるいは、仕事以外の個人的な活動なども取り上げ、もっと幅広く素晴らしい人を見つける運動にした方が面白い……などの意見が上がり、進化していった。

その好例が、地域のサッカーチームに所属して熱心に練習に励み、広島代表として見事全国大会に出場した人物だ。これはすごい! と話題になり、彼にスポットを当てて紹介し、皆で拍手し、称賛した。人は褒められると、認められたと思うが、彼もしかり。彼はそれを力にいっそう仕事に励み、仲間とともに一生懸命に取り組み始め、今では中四国№1の仕事ぶりを誇っている。

この運動は幹部たちにも影響を及ぼした。部下の動向を見守り、耳を澄ませているうちに、今まで以上に部下との交流が深まり、部内が活き活きとしてきたことも事実である。
人を幸せにできれば自分が幸せになれる。幸せになるためには人を幸せにするのが近道と言えそうだ。

広島の花王時代には、エコナの回収問題を乗り切り、洗剤の革命を起こしたアタックネオ、ヘルシアスパークリングなどの大ヒットも経験させていただいた。一言で言えば「本当に楽しかった」。



そうした広島時代の思い出をご紹介しつつ、マルコ様の研修を締めくくった。

マルコ様のスタイリストとお客様との繋がりは、本当に深い。ファンデーション(下着)を通したお客様のボディラインづくりだけでなく、共に食事、運動をし、時には心のケアまでも含めた総合的コーチングマネージャーのような存在のスタイリストが多い。
年に一度、お客様がご自分の心と体型の美の実践を披露する「MMPC(マルコ・メイキング・プロポーション・コンテスト)」というイベントがある。お客様が日頃の自分磨きを競い合う発表会で、各地区の代表のお客様はキラキラ輝き、我がこととして共に励んできた各地区のスタイリストの応援にも力が入る。私は審査員の一人として出席させていただくのだが、その熱意と全員の一生懸命さに圧倒されてしまう。



まさに、マルコ様の一体感は、お客様とマルコ社員相互の4つの幸せの共有から出来上がっている。今回研修に参加された感性豊かなスタイリストの方々からは、今後もさらにお客様の姿を深く見つめることで、もう一度既存の概念を見直し、皆で認め合い、励まし合って、お客様の「4つの幸せ」を肝に銘じて活動すると、仰っていただいた。

一方で私は、マルコ様の研修を通して、私自身がまだまだ既存の概念に捉われていると反省した。常に自分自身が出来ているのだろうか? と問いかける機会を与えてもらった。



実は先日、柔道の試合で負けた息子にダメ出しをして、反省会を押し付けたのである。あの時何故、気の遠くなるほど練習をしている息子を、そのプロセスを「褒めて認める」ことをしなかったのだろう……。いきなり負けたことを咎めることは、プロセス自体も否定してしまう。

最近、会社でもそうかもしれないとの思いがよぎった。
マルコ様の研修の翌朝、未熟な自分に言い聞かせるように、鏡の自分に向かってつぶやいた。
「さあ、今日は誰をどれだけ褒めようか~、それも満面の笑みでだぞっ。笑おう」
日々の幸せを与える実践の中で、それが自分の幸せ、と感じるようにならなければ!


田辺 志保

2014年8月7日木曜日

「持論を常に熱く語る」。これが田辺流! <前編>

先日、当社の大切なお取引先様、大阪に本社をおく「マルコ株式会社」(以下、マルコ様)の方々が、研修を兼ねて小田原のカネボウ化粧品の主力工場にみえた。
マルコ様は、1978年、日本で初めてプロポーションを整えるための「体型補整下着」を完成させた、その道のリーディングカンパニーである。
以来、世の女性に夢と自信を与えることを使命とし、一貫して最高のモノづくりにこだわり、美しいボディラインと健康づくりを提案・提供する総合コンサルテーション企業として、お客様から高い評価を得ている。
全国各地のマルコショップのボディスタイリスト・コンシェルジュ(以下、スタイリスト)は、理想のプロポーションづくりに励むお客様からの絶大な信頼のもと、ゆるぎない顧客関係を築いているのだ。

そうしたマルコ様と当社が1997年に「アクセージュ」というボディケア化粧品を共同開発した。「アクセージュ」は当社の優れた処方技術および、植物エキスをはじめとする様々な成分と、マルコ様のコンセプトとお客様像を融合させてアクセージュボディシリーズとして発売した。2008年にはバストの肌に潤いとハリ、艶を与える「バストライブセラム(潤い・ハリ・艶効果)」と、肌を柔軟にしてハリを与える商品「ボディマッサージジェル(潤い・ハリ・柔軟効果)」が登場し、現在多くのスタイリストが自信をもってお客様におすすめし、お客様には、感触、効果、香りなどを感じていただき、ファンデーション(下着)と共に大変ご好評いただいている息の長い優れものである。



研修には全国から優秀なスタイリスト30名と幹部の方々が参加され、我々は緊張しつつお迎えした。研究・開発・製造のラインなどを見学していただき、その後、お客様との繋がり強化と接客力向上の秘訣などの話も聞きたい、というご依頼を受け、不肖、私の講演も企画させていただいた。
そこで、私は「出会いは人生の宝」と題して、“自己を高める大切さ”と“人との接し方を円滑にすすめるコツ”などをお話しした。

何の会社だろうが、業態、業種を問わず、業績向上に不可欠なことに「従業員のモチベーションアップ」「組織の活性化」があり、モチベーションアップ、良好な人間関係を如何に築くか、組織の活性化のためのマネジメント力をどう駆使するか、が大きな課題だと思う。


既成概念をぶっ壊して「感動」の数を増やそう。

言うまでもなく、我々は人と人との関係で成り立っていて、一人で生きていけないので、その課題の解決には、まず自分の「眼力を高める」ことだ。まずは相手を見る目を養うことが重要で、さらに自らを相手の本質に迫ることが出来るよう進化させることである。
眼力向上には「感性を磨く」こと。自分と関わり合いをもつ人に関心を寄せることから始める。以前ブログで紹介した「ザイアンスの法則」にあるように、今まで以上に相手の言動に関心をもつことで思わぬことが分かり、相手への好感度もアップするのだ。

我々は、どうしても印象という表面的な既存概念にとらわれ、それが邪魔して相手の本質を見失うことがある。「あの人、じっくり話してみると案外いいとこあるね」と、思った経験はないだろうか。あるとすれば、それは自身が見かけの印象にとらわれ、勝手に決めつけていた証拠である。しかも、それらは自身が体験し、知識として習得してきた狭い範囲内での尺度に過ぎず、世の中には、自身が知らないことが山ほどあることを忘れてはならない。

常に、感性を磨いていると、気付きの範囲も質が変わって、それまでの判断基準が変わるはずだ。今までより感心することが増え、感心する数が増えれば増えるほど感激する場面も2倍、3倍になる。その感激の深さの先には、人様にその感激を伝えたり、自ら行動に移したり、まさに「感動の領域」が拡大する。

今回、その既存概念を変化させる、感動領域の拡大のケーススタディとして、野口雨情作詞の童謡「シャボン玉」(野口雨情作詞 中山晋平作曲 1922年)を取り上げた。
まず、マルコの皆様と「シャボン玉」を歌った。

皆さんも会場にいるつもりで歌い、読みすすんでほしい。

シャボン玉とんだ 屋根までとんだ
屋根までとんで こわれて消えた

シャボン玉消えた 飛ばずに消えた
生まれてすぐに こわれて消えた

風、風、吹くな シャボン玉とばそ

歌い終えたところで、この歌の背景をお話しした。
「シャボン玉」は、大正111922)年に雑誌『金の舟』に発表された童謡である。日本を代表する詩人、童謡、民謡作詞家である野口雨情には、「十五夜お月さん」「七つの子」「赤い靴」「あの町この町」など、思い出深い作品がいくつもあるでしょう、と。
そして、「シャボン玉」の作詞に関しては、1908年、妻ひろとの間に長女みどりをもうけたが、生まれて7日後に亡くなった。子煩悩な雨情はそのことをたいそう悔やんでいたという。当時は乳幼児が死ぬことは珍しい事ではなかった。しかもその後、雨情は何人かの子どもに恵まれているが、子どもを失う悲しさは尋常でなく、シャボン玉の歌の本質は「鎮魂」の思いだと言われている。
さらに、ある日、故郷の茨城県磯原村(当時)で少女たちがシャボン玉を飛ばして遊んでいるのを見た雨情が、「娘が生きていたら今頃はこの子たちと遊んでいただろう」と思いながらこの「シャボン玉」を書いたと言われている。

こうした歌の背景をお伝えして、もう一度「シャボン玉」を口ずさんでもらった。
皆様、涙なしでは歌えなくなってしまった。
今までの「シャボン玉」の印象と異なったようだ。相手を知り、深く観察し理解することで、見方が変わることを多少なりとも実感していただけたように思った。背景を知っている私も喉が詰まってしまう。

ちなみに雨情は7歳の時に母親を亡くしており、童謡「七つの子」で子どもを思い泣いているカラスは、7歳の雨情を残して亡くなった母の心であるとも言われている。
カラス なぜなくの カラスは山に 可愛い七つの 子があるからよ
可愛い 可愛いと カラスはなくの 可愛い 可愛いと なくんだよ  

多くの解釈・諸説があるが、私はこうしたことを知ると雨情の歌に人生のはかなさや命の尊さを深く感じてしまう。



大切なことは、一方的な見方や他者の受け売りだけで判断するのではなく、絶えず多面的に知ろうとする好奇心と、俯瞰して捉える鋭い感性をもつことである。「それって本当?」「ちょっと違うんじゃないの」といった小さな疑問、好奇心を抱いたり、視点を変えて見たり、真相、本質に近づこうとする心もちが、既成概念を崩すことや、新たな発見につながり、全く違ったより大きなものを包み込むものへと変化する第一歩かと思う。

田辺志保